研究概要 |
ペロブスカイト型酸化物,ABO_3,は強誘電性、超伝導性、プロトン伝導性などの様々な物性を示す大変重要な酸化物である。また、温度変化や機械的な応力などで構造相転移することが知られている。本研究では、代表的なペロブスカイト型酸化物である、A元素をSrとするSrBO_3(B=Ti,Zr,Hf,Ru)と、B元素をTiとするATiO_3(A=Ca,Sr,Ba)を取り上げ、構成イオンの違いによる構造相転移の相違と、温度変化に伴う構造相転移を電子論の立場から理解することを目的とした。 ABO_3とA,Bの最も基本的な酸化物であるAO,BO_2のイオン間距離を比較した。そして、イオン間距離の違いによって、化学結合状態に相違が現れるため、これら酸化物の構造相転移の仕方が変わることを明らかにした。 すなわち、BaTiO_3では、BaイオンがTiイオンに比べて大きいのでBa-Oイオン間の距離が非常に長い。その結果、Ba-O間の結合が弱い。このため専らTi-O間の結合を回復させるように、Baイオンとは独立に、OイオンとTiイオンの並進による構造相転移が起こる。 一方、SrBO_3(B=Ti,Zr,Hf,Ru)では、Srイオンの大きさはBイオンに比べて大きいものの、Baイオンほどではないため、弱いながらSr-O間の結合が重要になる。そのため、B-O間の結合とバランスをとりながら、BO_6八面体の傾きによる構造相転移が起こる。このとき、Sr-O間の結合がバッファ的に働き、温度とともに構造が変わっても、SrBO_3の電子状態はほぼ同じ状態に保たれている。 このように、ペロブスカイト型酸化物ABO_3の構造相転移を支配する因子として、(1)構成元素であるAイオンとBイオンの大きさと、(2)それらが作る基本的な酸化物、AOとBO_2の化学結合の性質を挙げることができる。
|