準結晶の構造や安定性を議論する上で、準結晶-準結晶相変態や準結晶-近似結晶相変態のメカニズムを調べることは重要である。特に準結晶特有のフェイゾン歪と相変態との関係を明らかにする必要がある。多くの準結晶には実際ランダムフェイゾンやリニアフェイゾンが含まれており、理想的な準結晶からずれている。とくに後者は、構造的に近似結晶と密接な関係がある。そこで、我々は、種々の準結晶について単準結晶を作製し、フェイゾン歪の検出を行った。AlCuFe系I相準結晶は、X線回析実験により、5回軸上のピークのみが顕著にピークシフトのQ⊥依存性を示すことから、5回軸に沿ったリニアフェイゾンの存在が明らかになった。これはI_hからD_<5d>への対称性の変化であり、シフト量の大きさから、I相準結晶からP2相への変態であることが明らかになった。この結果は1999年10月ドイツで開かれた第七回準結晶国際会議において報告し、注目された。それが、別添論文(1)である。 A1NiCo 系D相準結晶には組成と温度の違いにより、種々の形態の相の存在が報告されている。これらの相の安定性と相変態のメカニズムを調べる目的で、フェイゾン歪の種類、及び、その温度、組成依存性についてX線回析及び高分解能電子顕微鏡を用いて研究した。その結果、組成A1_<70>Ni_<10>Co_<20>の低温相bCoから高温相S1への相変態には、ランダムフェイゾンが関係し、組成A1_<72.7>Ni_<8.5>Co_<18.8>の低温性5Fから高温相5F_<HF>への相変態には、リニアフェイゾンが関係していることが明らかになった。また、組成A1_<70.3>Ni_<23.0>Co_<6.7>の高温相bNiをも含め、いずれの相も高温ではフェイゾンを含まない完全性の高い準結晶であることが明らかになった。この結果は1999年11月日本金属学会において報告し、注目された。現在論文投稿中である。
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