リチウムイオン二次電池負極の充放電容量の増大をめざして、より高密度でLiを挿入できる金属間化合物の探索を行ったところ、Mg_2Snを見出した。この化合物はわれわれのグループがこれまでに報告してきたMg_2GeやMg_2Siと異なり、MA時間の変化に伴い立方晶から斜方晶へ相転移することがわかったため、結晶系の違いが電池充放電特性に与える効果を調べた。 MgとSnを出発物質としてメカニカルアロイング(MA)したところ、3時間で立方晶のMg_2Snが単一相で得られた。MA処理時間を延長すると、5時間で立方晶と斜方晶の混合相のMg_2Snが得られ、さらに7.5時間では斜方晶の単一相となることが示された。 得られた試料を用いて作成したMg_2Sn電極の放電容量の充・放電サイクル依存性を調べた。その結果、立方晶単独のものでは電池容量は小さいが、斜方晶との混合相となることによって容量の増大が見られるとともに、その容量は20サイクル後においても250mAhg^<-1>を保っていることが示された。斜方晶単一相の電極についての結果から、この容量の増大と良好なサイクル特性は、斜方晶相の寄与によるものと推察される。また、混合相Mg_2Sn電極の充・放電サイクル特性は、Mg_2GeやMg_2Siと比較しても格段に優れていることがわかった。
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