表記の研究課題について3種のTi系形状記憶合金を中心に検討を行った.Ti-NiのB19'M(単斜晶)では結晶の対称性が低いため{11-1}、{011}第I種双晶、<011>第II種双晶及び(100)、(001)複合双晶が存在する.母相中に整合析出物Ti3Ni4が存在する場合、母相結晶粒径が数μm以下の場合、Ti2Ni化合物中に分散した数μm以下のTiNi粒子では(001)複合双晶が支配的な内部欠陥となる.また、強変形により新たに{20-1}複合結晶が導入されることが知られた.Ti-PdのB19(2H)マルテンサイト(斜方晶)では格子不変変形である{111}第I種双晶、それと共役な<121>第II種双晶に加えて{101}複合双晶が存在する.また、M相状態で時効を行うと、(001)積層欠陥が現れた.Ti-Pdの9Rマルテンサイト(単斜晶)ではTi-Pdの2Hマルテンサイトの3種の双晶と格子反応を持つ{11-4}第I種双晶と{59-1}第II種双晶及び{105}複合双晶が確認され、第II種複合双晶が支配的なモードであった.このことは単斜晶構造のマルテンサイトにおいては第II種双晶が格子不変変形として選択されやすいことを示唆している. 上記の3つの合金で観察される第I種双晶及び複合双晶の界面は、K1面に関して鏡映対称にある原子配列が見られ、各々の結晶学的特徴を良く表していた.しかし後者の界面は前者ほど平滑ではなかった.第II種双晶のK_1面は無理指数面があることから、低有理指数面のledgeとstepとから構成されるというモデルとそれを支持する観察結果が報告されている.しかし、本研究ではEdge-on方位から観察した3種の合金の第II種双晶界面ではすべて数原子幅の不規則に湾曲したコントラストが見られるのみであった.これらのことから第II種双晶の界面は本質的に数原子幅の弾性的なひずみ緩和領域を伴ったものであると結論できる.
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