従来中性子回折法に頼っていた原子番号が近い原子間の合金や多元合金の構造研究に注目し、放射光の特性を生かしたX線的研究法の開発を試み、一応の完成を見た。内容は次の通りである。 1)多元合金の長範囲規則度パラメータを、強度の概念で定義し、異常散乱法によってそのパラメータを決定する方法を確立した。また、そこからさらに原子配列の決定する方法を検討した。 従来の定義に基づく長範囲規則度パラメータは、単位胞内の原子配列の別の表現法であり、構造解析の途中段階においては、未定の量である。多元合金の場合、異常散乱法からは異なる原子対に関する部分強度が求められ、その大きさは規則性の程度に密接に関係することから、われわれは、その部分強度の大小を決める量として長範囲規則度パラメータを定義した。これは部分強度分解ができた後、自動的に決定することができる構造のみに関する量である。 2)未だ明確な構造決定の報告がないCu_2NiZn3元規則合金を試料として採り上げ、放射光によるX線異常散乱実験を実行し、われわれの方法論に従って、長範囲規則度パラメータを決定し、そこから、長範囲規則構造を推定した。 これまで、Cu_2NiZn3元規則合金に対しては、平林の構造モデルとKoesterのモデルが提案されていたが、いずれも決定的な方法によるものではないことから、未だに疑問が持たれていた。われわれの方法によって、はじめてKoesterモデルが正しいことが判明した。その構造は、FCC単位胞のコーナー席にZnが、面心席にCuとNiが混合して存在する構造である。
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