平成9、および10年度において、カーボンブラック・アルミナゲルアロイ薄膜の電気抵抗値は、グラフト鎖の良溶媒蒸気中で著しく低下し、新規のガスセンサーとして機能することを明らかにした。そこで、本年度は、(1)カーボンブラック表面への分子量の制御されたポリマーのグラフト、(2)カーボンブラック・アルミナゲルアロイのガス応答速度に及ぼすグラフト鎖の分子量の影響、(3)カーボンブラック・アルミナゲルアロイのガス応答性に及ぼすグラフトポリマー鎖の種類の効果、および(4)酵素固定化カーボンブラックを組み込んだアルミナアロイの合成について検討を行った。その結果、以下の成果が得られた。 1.カーボンブラック表面へ導入したアミノ基でリビングポリマーカチオンを停止することにより、粒子表面へ分子量分布が狭く、しかも分子量が制御されたポリマーがグラフトできることを見出した。 2.カーボンブラック・アルミナゲルアロイ合成の際、分子量の小さいポリマーをグラフトしたカーボンブラックを用いるほど、その抵抗値のアルコールや水蒸気に対する応答性が速くなることが分かった。 3.カーボンブラック・アルミナゲルアロイのガスセンシングにグラフト鎖のカルボニル基とアルミナゲルの水酸基との間で形成される水素結合が重要な役割を演じていることを明らかにした。 4.各種のカルボニル基含有ポリマーをグラフトしたカーボンブラックとアルミナゲルとのアロイの電気抵抗値は、グラフト鎖の良溶媒蒸気中で著しく低下し、しかも乾燥空気中へ戻すと、初期抵抗値へ戻り、新規の多機能センサーとして機能することが分かった。 5.グラフト鎖へ酵素を固定化したカーボンブラックを用いると、酵素を組み込んだアルミナアロイが得られることが分かった。しかしながら、この様な抵抗体にはグルコースヘの応答性は認められなかった。
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