黒鉛に代表されるsp^2炭素の六角網面に官能基を導入する反応手法として、フェロセンの配位子交換反応が適用できることをこれまでに明らかにした。本研究は、従来得たこのような知見を基礎とし、配位子交換反応を多様なsp^2炭素や各種メタロセンの反応に拡張し、その一般的有効性を実証すると共に、主として触媒への機能展開を図り、以下の成果を得た。 (1)カーボンブラック、高配向熱分解黒鉛、活性炭素繊維(ACF)、カーボンナノチューブなど多様な炭素試料に対してフェロセンの配位子交換反応が進行することを明らかにした。 (2)ニッケロセン、コバルトセンなどフェロセン以外の多様なメタロセンでも配位子交換反応が進行することを明らかにした。 (3)活性炭素繊維のフェロセン配位子交換生成物(ACF-Fe)の加熱に伴う炭素の状態変化についてラマン散乱測定によって評価した結果、表面に導入したFe種が黒鉛化触媒として有効に作用することを明らかにした。特に、ACF-FeをKBH_4還元した後に加熱処理すると結晶性成分の割合が大きく増加した。 (4)ACF-FeをCO_2賦活し、細孔径、細孔容積、比表面積を測定した結果、塩酸処理後にACF-FeをCO_2賦活すると、これらの値が大きく増加することを明らかにした。本試料では、表面Fe種が賦活触媒として有効に作用することが知られている塩化鉄に転化したためであると推察される。 (5)サイクリックボルタンメトリー法にて各種CO_2賦活生成物の比容量を評価した結果、塩酸処理後にACF-FeをCO_2賦活した試料が、電気二重層キャパシタとして最大の比容量を与えることが判った。
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