リチウムイオン二次電池用負極材料として、黒鉛化度の低い低結晶性炭素材料が開発され、黒鉛の理論容量を越える量のLiを受容可能な炭素材料が得られている。さらに、低結晶性炭素材料の高容量化を目的として、炭素材料にホウ素、窒素をドープする試みがなされ、充電放電容量がより大きい材料が得られている。しかし、ホウ素を単独でドープした場合は、2.35%以上のドープは困難であり、Li充放電容量が飛躍的に増加することは望めない。 最近、室蘭工業大学の佐々木氏のグループでは、ボラン-複素環化合物を原料とし、熱分解によりBCNアロイを生成している。このアロイの元素組成比は、B:C:N=2:4:1であり、BとNを同時にドープすることにより、従来よりも多くのBをドープすることができる。また、XPSの実験結果から、このアロイ中には、BNB単位が存在する可能性が高いと指摘されている。 本研究では、低結晶性炭素材料のモデルとして、6角形のC_<54>H_<18>及びC_<96>H_<24>シートを採用し、そこにBNB単位で置換を行った場合の安定構造、電子状態、Li吸着特性の変化を、半経験的分子軌道計算(MOPACのMNDO法)により解析し、ホウ素を単独で置換場合と比較することにより、以下の点を明らかにした。 (1)BNB置換は、B周辺の格子歪みを緩和し、より多くのB置換を可能にする。 (2)BNB置換シート上にLiを吸着させると、LiはN周辺には吸着し難く、Nを置換元素として含めることによりシート上のLiが吸着し易いサイトは減少する。
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