研究概要 |
活性炭の持つ、良導性のナノ細孔に磁性を持つ有機ラジカル分子を高濃度に吸着させることにより、磁性と導電性が共存する材料を調整し、その磁性と導電性の相関を調べることを目的に研究を行った。 活性炭に吸着されても失活しないよう、酸化及び還元に対して強い抵抗力を持ったニトロニルニトロキシドラジカルを基本とし、酸化及び還元で多重項状態をとる分子や、活性炭中の水酸基等の残基との相互作用を期待し、水素結合性を持つラジカル分子を合成した。 活性炭材料としては、ヤシガラ活性炭及び、ピッチ系活性炭素繊維を用い、有機溶媒中でラジカル分子を吸着させた後,SQUID磁束系、及びESRを測定した。 ACW-TYSに吸着させた場合、重量濃度で最大15%程度ラジカルを吸着した。重量の増加分とスピンの増加量はほぼ一致し、ラジカルは吸着されてもほとんど失活しないことがわかった。一方、活性炭素繊維は重力の増加分は測定誤差範囲内であった。そこで、磁化率の増加分から見積もったところ、用いた中で最も細孔径の大きいP20の場合でも0.2%の吸着量であり、他の組み合わせでは吸着を確認できなかった。そこで、より強い相互作用として水素結合の利用を考え、水酸基を有するラジカルの吸着を試みたところ、最大で3%程度と、吸着量の増加が見られた。この結果は、活性炭中の水酸基等との水素結合とともに、分子同士が水素結合するためと考えられる。 これらの試料の磁化率の結果から、吸着されたラジカル分子間にはほとんど相互作用が働いていない事が明らかになった。そこでESRを測定したところ、g値がラジカル分子そのものより母体となる活性炭に近い値を示したことから、ラジカル分子と活性炭の相互作用が明らかになった。より多重のラジカル分子を吸着させることにより、顕著な磁気特性の発現が期待される。
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