本研究では半導体中の核スピンに着目し、世界でも例のない半導体中の核スピンの濃度と分布を制御したシリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)構造を作製・評価する事を目的とする。量子コンピュータの実現に向けても半導体中の核スピンを利用することが最近提案されて大きな注目を集めている。そこではSiまたはGe中に^<31>Pのように核スピンを有する不純物を一定間隔に埋め込み、各^<31>Pの核スピンのup状態とdown状態を制御し、相互作用させることから量子コンピュータを実現しようとする。^<31>P同士の距離が離れすぎると相互作用が弱まり量子コンピュータは実現しないが、近すぎるとお互いの相互作用が強すぎて核スピンの緩和時間が短くなり、実効計算時間がかせげない。更に、^<31>Pを埋め込んでいるSiやGe自体が核スピンの緩和時間が短くなる。よって、核スピンを有する同位体を排除したSiおよびGe単結晶を成長することが重要となる。 そこで、平成11年度には、不純物核スピンを利用したSiおよびGe量子コンピュータの実現の可能性を調べることを目的とし、核スピンを排除した^<28>Siおよび^<70>Ge同位体単結晶の成長に世界に先駆け成功した。今後は、これら結晶に核スピンを有する不純物を選択的にドープし、それらの核スピン緩和時間について調べる予定でいる。
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