研究概要 |
「CP対称性」が破れると、物質と反物質の間に相違が現われる。 その典型例は、宇宙の「バリオン生成問題」であり、高エネルギー物理においては、KEKやSLAC等で実験を開始したB中間子を用いたCPの破れの研究である。 (1)各種の模型等を用いた宇宙のバリオン生成問題と、(2)B中間子の種々の崩壊過程および、(3)電子-陽電子散乱におけるウィークボソン対生成過程を、CPの破れを中心として研究する事によって、これら3つの問題の間に緊密な関連性を見いだす事を研究目的とした。 楊亞東と菅本は(2)のB中間子の種々の崩壊過程に関する問題において、Bc中間子がη′中間子とレプトンおよび反ニュートリノに崩壊する崩壊率をQCDを用いて計算した[Phys.Rev.D60(1999)054009]。これは新しい試みである。その分岐比は0.016%と評価されたが、これはη′中間子を含まない純粋なレプトン崩壊よりも大きい値であった。特に、このモードの分布がη′中間子の反挑運動量が小さい領域に鋭いピークを持つので、容易に識別可能であると考えられる。従ってLHCの実験に取って重要なモードであり、そこでの検証が期待できる。又大下と菅本達は、b→s+γ過程へのベクトル型のクォークの効果をくりこみ群補正を用いて調べた。 (3)これに関連して行った、大下と菅本達の電子-陽電子散乱におけるウィークボソン対生成過程に関する研究においては、このアップタイプとダウンタイプのベクトル型のクォークを余分に持つ模型を用いて、これがCPを破るWWZ結合にどの程度寄与するかを調べた[Eur.Phys.J.C10:327-330,1999]。この効果は通常のWWZ結合の0.001%でありそれ程大きな寄与は得られなかった。
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