将来の素粒子実験において微弱信号を捉える高性能CCDは、崩壊点検出器として有望な候補であるが、比較的放射線損傷に弱いとされており、その耐性を実験的に見極める必要がある。 CCDの性能の劣化は主に、1)暗電流の増加と2)電荷転送中の損失(電荷転送損失率:CTI)の増加を招く。我々は大強度放射線(電子線・中性子線)を当て、これらを広く温度範囲(-100℃〜常温)にわたって放射線ダメージの状況を調べた。 今までの研究により、CCD表面へのダメージは暗電流の増加を招くことがわかっている。駆動時の反転ゲート電圧を上昇させることで暗電流を十分に抑えるための動作点を見出した。また、この影響は電子線照射において特に顕著であるり、中性線に対しては影響が少ないことがわかった。 そういった最適化のもと、CTIの温度依存性をより精密に行った。これは、生成されたトラップレベルにより、異なる振る舞いをするが、精密なシミュレーションを開発し、電子線・中性子線両者について、実験結果がよく再現できることがわかった。 さらに「ノッチ」と呼ばれる構造により、耐放射線を高めたCCDについても測定を行い、標準のものよりも3〜4倍高い放射線耐性があることがわかった。 これらの研究により、将来の線形加速器実験で予測される電子線において2x10^<11>/cm^2/year、中性子において2x10^8/cm^2/yearの放射線被爆においても、CCD素子を飛跡検出器として利用できることに目処が立ちつつある。
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