研究概要 |
水産物は貴重なタンパク源として日本人の食生活に無くてはならないものになっている。しかし近年の食生活の変化に伴って、水産加工製品の需要が増えてきている。水産加工製品は製造過程で重量比約85%のエミッションを発生することが知られ、このような傾向は水産物由来負荷の増大へとつながっていく。このような水産廃棄物は最終的に水産加工廃水処理場へと運ばれ最終的には余剰汚泥として肥料会社に引き取られ、また廃棄されている。近年海域での窒素微増の弊害が心配されていることもあり、最終的に窒素に的を絞った議論が大切になっていく。石巻地方ではまた剥き身のカキ約4000トンに相当するカキ殻を毎年海に近い山間の沢に廃棄してきた。今後これらのより高度な利用とエミッション低減を考えると、漁港情報から水産物由来(窒素)負荷情報を得られるように得るための努力と共に、余剰汚泥を農地還元する際の質的問題をカキ殻との組み合わせで解決していく努力も必要になっていくだろう。本研究の目的は、漁港情報から水産加工廃水処理場を経由して出てくる窒素負荷を予測すること、カキ殻の投棄された地域を対象に質的な問題を検討すること、農地からの窒素溶脱や必須元素溶脱が、カキ殻投入によってどのように変化するかを検討することの3つである。カキ剥き直後の貝柱他肉片が多く残った状態で投棄された結果と考えられる。有害金属濃度はカキ剥き直後投棄の沢で高い値を示したが、古いカキ殻と接触して流下する過程でCd, Pb等は減少していった。一方この沢では必須元素が多く含まれていた。このような結果を背景に水産由来汚泥を土壌に混ぜ、これにカキ殻が加えられた場合土壌浸透水がどのように変化するかを、リン・窒素を中心に比較した。カキ殻が加えられることで、土壌浸透水中のリン・窒素は大きく減少した事が示されている。しかし、鉄・マンガン・亜鉛やカルシウムなどはリン・窒素に比べ変化が小さくなっていた。カキ殻を水産系汚泥と一緒に土壌に混ぜることで、地下水への窒素溶脱は効果的に抑えることが出来るようになり、流域から河川へ流れ込む窒素負荷を低減できる可能性が示された。海からの恵みを海に戻すためにも、海から漁港、形を変えて田畑へ、そして河川を経て海へ戻る循環の中で、健全な循環を取り戻すためのカキ殻の役割に関する更なる検討は今後の課題と思える。
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