超伝導体中の磁束量子の直接観察は同材料の応用上極めて重要であり、これまで様々な手法が開発されてきた。本研究では、nTレベルの高い磁場感度を持つ走査型SQUID顕微鏡(SSQM)を用いて、高温超伝導体(BiSrCaCuO(BSCCO)及びBiPbSrCaCuO(BPSCCO))中の磁束量子観察を行ったので報告する。 単結晶試料は、いずれもフロ-ティングゾーン法により合成した。磁化率より見積もった超伝導転移温度(Tc)は、77K(BSCCO)及び65K(BPSCCO)であった。試料は環境磁場(〜20mG)中で冷却し、3KにおいてSSQM測定を行った。微小SQUIDリングの内径は7.5mmであり、試料面に垂直方向の磁場(Bz)を検出する。 BSCCOのab面上で観測されたSSQM像から、ほぼランダムに配列したボルテックスが認められた。測定された磁場値を個々のボルテックスの周囲で積算することにより、それぞれが磁束量子であることを確認した。ボルテックスの断面図に対し理論曲線をフィッティングした結果、試料-SQUIDリング間距離zを5.5mmと仮定すると、実験結果をほぼ再現できた。 BPSCCO層断面においては、ジョセフソンボルテックスが観測された。lc>>labに対応して、ボルテックスは層に平行方向に伸びていた。このジョセフソンボルテックスの層方向のプロファイルについても同様に解析した結果、lc=9.5mm、z=6.5mmという値を得た。このlcは、文献値(〜10mm)と非常に良い一致を示した。
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