高速パルス信号計測への高温超伝導SQUIDの適用を検討した。回路には帯域の拡大が可能な非変調方式を採用し、APF回路を用いて磁場電圧変換係数を通常の1.5倍にした。その結果、模擬ケーブルに流したパルス巾100nsec、電流40μAのパルスを検出することができた。併せて、生体高分子を磁性体微粒子で標識し、SQUIDで検出する手法の開発を進め、基本原理の確認を行った。この際、標識に用いる磁性体微粒子のサイズが大きいと特異的に結合している磁性体微粒子も同時に除去されてしまう可能性があるので、標識にはある程度小さな磁性体微粒子を用いる必要がある。現在までに、標識に用いるのに十分小さな磁性体微粒子(直径10nm程度)が市販されているが、この程度の大きさとなると微粒子内の磁区が単一となってしまうために、超常磁性体となり、室温ではほとんど永久磁気モーメントを持たなくなる。従って、何らかの方法で磁化する必要がある。これまでに強いパルス磁界を印加してその直後の1/100秒程度の減衰を計測する方法(Koetitz)や、直流磁界を印加して磁性体双極子からの磁界を計測する方法(Enpuku)が考案されている。我々は交流磁界を印加してSQUID出力をロックイン検出する方法を試みた。磁性体微粒子は抗原抗体反応の後、タンパク質分解酵素によって容器壁から剥離、流動化され、SQUID検出部に輸送して信号を計測した。試料として磁気標識二次抗体を用いた場合には磁気信号はほぼ磁気微粒子の数量に比例しており、現在のところ約10^8個のビーズが検出できることが明らかになった。
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