本研究では帰納推論とアブダクションをそれぞれ知識の発見と同化のプロセスと位置づけ、帰納推論を使って発見された知識をアブダクションを使って同化するしくみを検討した。具体的な方法は以下の通りである。先ず、発見された知識を背景知識ベースに同化するプロセスを「拡張アブダクション」を使って形式化した。拡張アブダクションは、「正の観測」を説明する従来のアブダクションに対して、「負の観測」の説明機能を持ち、また、知識ベースに仮説知識を導入する「正の説明」に対して、知識ベースから知識を取り除く「負の説明」を生成する機能をもつ。この結果、背景知識ベースを新たな知識を使って更新するプロセスは、拡張アブダクションによる極小な説明の生成によって特徴付けることが出来る。次に、こうした拡張アブダクションによる知識ベース更新のプロセスを演繹的に処理するためのプログラム変換の手法を導入し、知識ベースの更新を論理プログラミングの計算手続きを使って処理する方法を示した。さらに、種々の知識ベースの更新の計算量を解析し、比較・検討を行った。
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