研究概要 |
大腸菌H709c株ゲノムDNAから、EcoO109I制限修飾酵素遺伝子をコードする9-kbのBamHI断片をクローニングした。このうちの3.2-kbのEcoT22I断片上に、制限修飾酵素遺伝子はクラスターを形成していた。制限修飾酵素遺伝子の周辺配列を解析した結果、P4ファージのインテグラーゼと溶菌サイクルに必須な遺伝子群が整列しており、大腸菌K-12株ゲノムの96分に存在するleuX遺伝子下流に、制限修飾酵素遺伝子を含む遺伝子群がインテグレートされたゲノム構造を持つことから、P4ファージの宿主菌株間でEcoO109Iシステムが水平伝播した可能性が示唆された。さらに、本菌株ではI型やメチル化DNA特異的エンドヌクレアーゼ遺伝子が欠損しており,唯一の制限系としてEcoO109I-II型制限修飾システムを保持するという、大腸菌としては極めて特異なゲノム構造を持つことが明らかとなった。制限酵素を大量発現させるため、3.2-kbEcoT22I断片から2.7-kbのHpaI-EcoT22I断片を切り出し、pUC118のlacプロモーターの下流に挿入して、IPTG添加で誘導を行った結果、制限酵素の生産量は親株であるH709c株の約160倍に増加した。高発現組換え体大腸菌から、3種類のカラムクロマトグラフィーを用いて、制限酵素を電気泳動的に均一に精製した。ハンギングドロップ法を用いて結晶化条件を検討した結果、PEG 4000を沈殿剤として用いたとき、柱状結晶が生成した。また、高発現化の過程で、制限酵素遺伝子の上流に存在する0.3-kbのORFから合成される蛋白質が、制限酵素遺伝子の転写活性化に関与していることも明らかにした。
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