研究概要 |
枯草菌細胞壁溶解酵素,CwlB,の細胞壁結合ドメイン(CWB)を表層局在化のアンカーとして使い、枯草菌リパーゼ,LipB,と融合させたCWB-LipBは表層に局在し、活性を示すが、培養の後期において著しく分解されることが解った。そこでこの分解を阻止し、表層におけるCWB-LipB蛋白の蓄積量を向上させるため、表層局在化プロテアーゼWprAの欠損株、細胞表層の多くの蛋白の生産を支配するシグマD因子(SigD)の欠損株、さらにWprA SigDの2重の欠損株を構築し、これらの宿主にCWB-LipBをコードするプラスミドを導入したところ、WprA SigD2重欠損株を用いた場合に顕著に蓄積させることができた。一方3種の分泌プロテアーゼ欠損株は有意な効果を与えなかった。次にこの技法を麹菌の生産するリパーゼ(CutL)に応用した。CutL蛋白は低級脂肪酸エステルに対し特に高い加水分解活性を示し、複合リパーゼの組み合わせに好適と考えられる。そこでcutLのcDNAのクローン化を行い、次にCwlBのCWBとLipBで用いた方法で連結し、CWB-CutLを構築した。この蛋白はLiClで表層より抽出出来ること、表層蛋白のSDS-PAGEでは約50kDaのCWB-CutLの分子量に対応するバンドが見られ、そのバンドはzymographyでもリパーゼ活性を示した。このことより麹菌リパーゼの表層局在化に成功するとともに、糖の修飾が無くても活性を示すことも解った。しかし表層蓄積量はCWB-LipBと比較して少なく、WprA SigD2重変異株以外ではほとんど蓄積が認められなかった。この結果は、異種蛋白は表層に於ても同種の蛋白より不安定であることを示唆している。
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