近年、さまざまな先天性・後天性疾患の治療や症状の緩和のために、遺伝子レベルで治療を行うアンチセンス療法などの遺伝子治療が注目を集めている。一方・T偶数系のファージは、グルコースを側鎖にもつシチジンを含むDNAを持っており、これは宿主に感染したときに制限酵素などにより切断されるのを抑制していると考えられている。本研究では、この天然に稀に存在する核酸塩基が糖で修飾されたDNAを模倣し、アンチセンス分子と標的遺伝子導入試薬の二つの役割を同一分子内にあわせもつ安定な分子として、DNA-糖鎖コンジュゲートを開発することを目的としている。 まず、連鎖移動剤存在下でのラジカル重合を利用して、末端にアミノン基を持つ糖質高分子を合成した。これをヨードアセチル化し、5′-末端チオール化されたオリゴDNAとカップリングすることで目的のコンジュゲートを合成した。またこの手法は、Cysを含むペプチド核酸(PNA)にも適用可能であることがわかった。また、5-ヨードデオキシウリジンを出発原料として、Heck反応により糖で塩基修飾されたデオキシウリジンを合成した。これを用いて、アミダイト法により固相合成し、任意の位置が糖で修飾されたオリゴDNAを合成した。これらのオリゴDNA-糖コンジュゲートのらせん構造や融解挙動は、未修飾のものと比べ、あまり変わらないことがわかった。蛍光法により、コンジュゲートのレクチン認識能を調べたところ、Galを持つブロック型コンジュゲートが、FITC-RCA120に対し、3.7×10^5M^<-1>という結合定数で認識されることがわかった。また、Galを1つしか持たないコンジュゲートでは、その半分ずらした相補鎖とハイブリダイゼーションさせ、自己組織化させることで糖を一定の空間配置でクラスター化させることで、協同的にRCAに結合することがわかった。
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