DNA結合蛋白質の特定塩基配列への結合、およびそれに伴うDNA構造変化は転写をはじめとする様々な生体反応において重要な役割をはたしている。それゆえ、任意の塩基配列結合能を有し、さらにDNA構造変化を誘発する分子は転写制御因子としての可能性を秘めている。これまでに代表的なDNA結合モチーフの1つである亜鉛フィンガーモチーフを複数個連結させることによって、結合塩基配列の拡張が可能であることが示されてきた。本研究では、転写因子SplのDNA結合領域に存在する三つの亜鉛フィンガーを基に新規6-亜鉛フィンガー型蛋白質を創製し、これらがDNA構造に及ぼす影響について検討した。その結果、リンカーが短いSplZF6(Gly)_4では11bp隔てた二つのGCboxの両側に1分子で結合することはできず、その結合は非特異的であると考えられる。しかし、SplZF6(Gly)_7とSplZF6(Gly)_<10>の結合は特異的で、11bp隔てた二つのGCboxの両側に1分子で結合していることが示唆される。wtが2分子で結合した状態を、仮想的に最も自由度の高いリンカーを介した6-亜鉛フィンガー型蛋白質の結合状態であるとみなすと、SplZF6(Gly)_7とSplZF(Gly)_<10>の結合による位相のずれの大きさは、リンカーに起因し、リンカーが短いSplZF6(Gly)_7の方がDNAに大きな方向性の変化を誘起していることが示唆された。本研究において、新しい機能を有する新規亜鉛フィンガーペプチドが創製されたが、将来、人工遺伝子機能制御分子の開発に道を拓いたものと思われる。
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