研究概要 |
グラム陰性の土壌分離細菌であるSphingomonas sp.A1は、原核細胞の細胞膜に必須のリポ多糖を持たず、代わりに真核細胞の細胞膜に普遍的に存在するスフィンゴ糖脂質を有する。また、細胞表層は巨大なプレートによって覆われている。本菌は、高分子物質を資化する場合、細胞表層のプレートを再編成させ、細胞表層に巨大な体腔を形成する。この体腔は、巨大分子の細胞内取り込みに関与しており、高分子物質は、先ず細胞表層に形成された体腔を標的として濃縮された後、体腔と連携した高分子物質取り込み系ポンプによって細胞内に取り込まれ、資化される。そこで、体腔の化学構造を明らかにするため、細胞表層プレートを密度勾配遠心法などにより大量に分離、精製した。現在、化学構造を解析している。高分子物質取り込み系ポンプに関しては、ポンプを構成する全タンパク質(3種類:AlgS,AlgM1,AlgH2,AlgQ1,AlgQ2)とその遺伝子を取得し、大腸菌での大量発現系を構築した。得られたタンパク質の機能を解析した。AlgSは細胞質性タンパク質であり、ホモ2量体を形成し、ATPを分解することによって取り込みに必要なエネルギーを産出する機能を有することを明らかにした。AlgM1とAlgM2は、どちらも6回膜貫通型のタンパク質であり、ヘテロ2量体を形成し、AlgSからのエネルギーを利用して高分子物質を細胞内に導入する透過酵素としての機能を持つことを示した。AlgQ1とAlgQ2の機能は同定できなかったが、細胞外への分泌に必要なシグナルを持っていないため、細胞質に存在して高分子物質取り込み系ポンプの構造を維持するアクセサリータンパク質であると考えられた。また、細胞内に取り込まれた高分子物質の分解に関わる酵素と遺伝子の構造も明らかにした。
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