1)高圧力としては50MPa以上300MPa以下のいわゆる可逆的変化領域と350MPa以上(700MPa以下)の不可逆的領域およびそれらの中間的領域の3領域に区分して検討している。これらの領域ではすでに単純酵素系では通常条件下とは大変異なる触媒機能の発揮されることが知られており、その根源となる構造上の変化をとらえ、触媒・分子認識能の詳細な変化を探求している。 2)具体的には、測定対象としてプロテアーゼの一つである中度好熱菌由来のサーモライシンによると、カルボキシペプチダーゼの一つである酵母由来のカルボキシダーゼYをとりあげ、その構造上の変化-主として蛍光光度法による-と、活性上の変化-分光光度法および蛍光光度法による-を、0.1-450MPa -20〜+50℃の範囲で測定した。 3)サーモライシンでは、基質によって圧力活性化の様相が異なること、またその119位のアミノ酸置換体における、残基と性質の関係を検討し、中性残基(野生種ではGln)を酸性残基(Glu、Asp)で置換したものでは、この酵素が本来持っている特徴的な圧力印加による高活性化現象が低減されること、200MPa以上での耐圧性も低下することを明らかにするとともに、別の中性残基(Asn)で置換したものでは、むしろ耐圧特性が向上することなどを見いだした。 4)カルボキシペプチダーゼYでは、構造上の変化と活性の変化のずれが明確に現れること、特に低温・高圧領域で著しい活性低下が見られ、これらはJonasらが提唱したいわゆる"Pressure-assited Cold Denaturation"の一つであること推論した。
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