1)ランダムタンパク質を提示したファージライブラリーの作製 昨年度の研究結果より、ランダムタンパク質が進化の出発点としてふさわしい性質を有していることが明らかとなった。そこで、25個のランダムタンパク質をコードしている遺伝子にPCR法で変異を導入して得られた遺伝子ライブラリーを、ファージミドpCANSS/SRに挿入し、ランダムタンパク質をfdファージのgene IIIタンパク質と融合した形で発現させ、2.1×10^6のライブラリーを得た。その遺伝子配列の解析により、PCRで導入した変異の率は全長130アミノ酸の中で平均3.45であった。また、ランダムタンパク質の発現効率は21.7%であった。したがって、得られたファージディスプレイライブラリーのバラエティーは、1.9×10^6〜6.2×10^7程度であると推定される。 2)人工進化のための選択系の構築 得られたライブラリーの中から進化の出発点となるランダムタンパク質を選定し、さらに、リガンド認識能力や触媒能力をもつ新しい機能性タンパク質に人工的に進化させるためには、効率の良い選択系を構築しなければならない。その一つとして、エステラーゼ活性の遷移状態アナログ(CA II)に対する親和性の差で選択する系を構築した。この選択系の有効性は、2種類のランダムタンパク質(RP3-42とRP-PR2-16)間の微小な親和性の差を識別し、RP-PR2-16ファージを濃縮できたことにより確認された。
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