グラム陰性細菌におけるタンパク質や酵素の分泌には、シグナルペプチドとSecタンパク質が関与するGeneral Secretory Pathway(GSP)機構とシグナルペプチド非依存性の分泌機構が報告されている。Erwinia属細菌やPseudomonas属性菌のシグナルペプチド非依存性型のアルカリ性プロテアーゼは、ABCトランスポーターと呼ばれる細胞内膜と細胞外膜に形成されたチャンネルを経て、ペリプラズム空間に留まることなく細胞外に分泌される。本研究は、複雑な膜構造をもつグラム陰性細菌の酵素分泌に働くシグナルペプチド非依存型分泌機構解明のために、Zymomonas mobilisに見出したシグナルペプチド非依存型分泌酵素であるレバンスクラーゼとインベルターゼの分泌生産を相補する約1.7kbのEcoRV断片をZ.mobilis由来染色体DNAからクローニングした。このDNA断片上にはzli Eとzli Sと称した2つのORFが存在しており、zli Eはレバンスクラーゼとイインベルターゼの遺伝子の転写を活性化する因子(transcriptional activator)であることを明らかにした。その解析過程で、1.7kb断片上のzli S領域が欠損することにより、レバンスクラーゼとインベルターゼがZ6C S2細胞内に蓄積される現象が観察された。これらの結果から、zli Sはシグナルペプチド非依存型分泌酵素であるレバンスクラーゼとインベルターゼの分泌を促進する機能をもつと推定した。 本年度は、(1)大腸菌内におけるzli Sの機能解析、(2)Z.mobilis内におけるzli Sの機能解析、(3)SucZE2およびSucZE3の分泌に関与する他の因子の検索、について検討した。
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