1)片末端に塩化シアヌルを有するポリジメチルアクリルアミド(PDMAA-CC)を、細胞外皮の糖鎖の水酸基、あるいは膜タンパク質のアミノ基を介して細胞膜に導入した。好中球様細胞にポリスチレン微粒子を添加すると活性酸素が産生された。一方、改質した細胞ではその活性酸素産生が抑制されている結果が得られた。高分子鎖による毒性発現及び細胞の活性化は認められず、機能低下も起こっていないことを確かめた。また、PDMAA-CCを血小板に添加しても初期には細胞内遊離Ca^<2+>濃度は変化せず、細胞は過度の刺激を受けていないことが確認された。改質した細胞に凝集惹起物質トロンビンを添加した場合、凝集能の低下がみられた。一方、低分子惹起物質であるカルシウムイオノフォアを作用させたところ、未改質の系と同様の凝集能を示し、トロンビンに対する凝集抑制は機能低下によるものではないことが分かった。 2)片末端だけにインテグリンのリガンドであるRGDSが結合したPNIPAM-RGDS、および複数のRGDSが側鎖に結合したPNIPAM-nRGDSを合成した。また、ミクロンサイズの温度応答性ゲル粒子を得た。この微粒子にアミノ基を導入し、RGDSペプチドの結合を行った。これらをヒト末梢血の好中球と接触させ、系の温度を25℃から37℃へと変化させた。ランダムコイル状態(25℃)のPNIPAM-nRGDSを作用させた細胞は、37℃への昇温に伴い過剰な活性酸素産生を示した。solubleRGDSによりレセプターをマスクした細胞ではこのような変化は認められなかった。PNIPAM-RGDSでも変化は認められなかった。微粒子でも、ペプチドを導入していない担体微粒子では産生量が非常に少ないのに対して、RGDS固定化微粒子では過剰な産生が観察された。この場合にもsolubleRGDSによるレセプターのマスクにより産生が抑制された。
|