研究概要 |
1.種々の腫瘍細胞に対する複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果 臓器由来の異なる種々の腫瘍細胞としてヒト肺腺がん細胞(RERF-LC-OK) 、ヒト胃がん細胞 (GT3TKB),ヒト肝臓ガン細胞(Hep-G2)を用い、複合脂質膜(L-α-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)/10mol%ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル(C_<12>(EO)_<10>),L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)/10mol%C_<12>(EO)_<10>,1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)/10mol%C_<12>(EO)_<10>)の増殖抑制効果を検討した。DMPCのみではほとんど増殖抑制効果がないのに比べ、DMPC/10mol%C12(EO)10複合脂質膜では大きな増殖抑制効果が得られ、特にヒト胃がん細胞(GT3TKB)で顕著であった。また、DMPG系の場合も、DMPGのみに比べDMPG/10mol%C12(EO)10複合脂質膜で用いた全ての腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を高めた。とくに、ヒト肺腺がん細胞(RERF-LC-OK)において最も顕著であった。これは、DMPGは頭部に水酸基を有しており、そのため腫瘍細胞への特異的認識効果が大きくなったものと考えられる。 2.in vivoにおけるマウス肺がんに対する治療効果 in vivoにおける肺がんモデルマウスに対する、DMPC/10mol%C_<12>(EO)_<10>複合脂質膜の治療効果について検討した。コントロール群では、平均生存日数25.0日、最大で45日間の生存日数に対して、複合脂質膜を投与した治療群では、すべての群において1年以上の生存が6例中4例認められ、完治している可能性が大きい。複合脂質膜は、副作用のない新しい化学療法剤として臨床応用が期待できる。
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