本研究は、ポリアセチレンに匹敵する広い主鎖共役をもち、かつ高い溶解性、成膜性、安定性を兼ね備えた置換ポリアセチレンを合成するための方法論を確立し、新しい電子・光機能材料を創製することを目的とする。本年度は、イミノ基やエステル基などの電子吸引基が芳香環および縮合芳香環に導入された種々の置換アセチレンの重合を検討し、生成ポリマーの特性、特に主鎖の共役の程度の評価を主眼として研究を行った。イミノ基を有するモノマーはWやMo触媒に対しては触媒毒として働き、メタセシス型の重合は不可能であった。しかし、挿入型の重合を達成し得るRh触媒を用いた場合、溶媒可溶な高分子量のポリマーが得られることが分かった。ポリマー主鎖は選択的にシス-トランソイド構造を有しており、これを反映し主鎖の共役の程度は低いものであった。一方、エステル基はメタセシス触媒に対して触媒毒としては働かず、長鎖アルキルエステル基が導入されたアントリルアセチレンはW触媒によって速やかに重合することが分かった。生成ポリマーは種々の溶媒に可溶であり、溶液・固体状態いずれにおいても安定なものであった。また、生成ポリマーは長波長領域(500-800nm)に大きな吸収を有しており、主鎖の共役が非常に大きく拡張されていることが確認された。長い主鎖共役を反映し、生成ポリマーはこれまでに合成された一置換ポリアセチレンの中でも最も大きな3次の非線形感受率を示した。また、ドープすることによって半導電性を示すことが確認された。
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