本研究により以下に成果を得た。 芳香環が縮環したピロールの合成とポリピロール及びポルフィリンへの変換:代表的な共役拡張化合物として、ポリピロールやポルフィリンがある。これらの一連の化合物は、光、電子材料として重要である。本研究では、これらの電子状態及びバンド構造を制御する方法として、芳香環の縮環したピロールを用いて多量体を合成し、芳香環の種類と置換基を変化させることによりこの目的を達成した。(2)強固なシグマ炭素骨格が縮環したピロールを利用したピロール多量体の合成と機能制御:ビシクロ[2.2.2]オクタン環のような強固なシグマ炭素骨格が縮環したピロールを合成し、その多量体の機能に及ぼすσ-π相互作用および立体効果について検討した。その結果ビシクロ環の縮環したポルフィリンは、平面性が高いにもかかわらず溶解性が高いことを見いだした。(3)構造と機能との相関:ピロール多量体(ポリピロールとポルフィリンを総称)の機能発現に及ぼす分子配列の影響を研究し、分子間のパイ電子相互作用や水素結合による分子配列の制御などと機能発現との相関を明らかにした。ビシクロ環の導入により、ピロール環の平面性が向上し、有効共役長が拡大することを見いだした。(4)新規ベンゾポルフィリンの合成:ビシクロ[2.2.2]オクラヂエンが縮環したポルフィリンを加熱することによる新規ベンゾポルフィリンの合成法を開発した。
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