1.より高密度な芳香環カラムの設計 水素結合部位を有する芳香環を、二つのアントラセン環で挟んだ直交型化合物の合成に成功した。このような化合物は、アントラセン環一つ当たりの水素結合部位が2分の1個となり、従来の化合物(アントラセン環一つ当たりの水素結合部位が一つあるいは二つのもの)に比べ、より高密度なアントラセンカラムを与えると考えられる。新規化合物の単結晶を種々の有機溶媒からの再結晶で得た。X線結晶構造解析については、現在進行中である。 2.大環状化合物への展開 アントラセン環にレゾルシン環を一つ連結させた直交型化合物(アントラセン-モノレゾルシン誘導体)は、レゾルシン環同士の分子間水素結合により、アントラセン環が交互に張り出した水素結合一次元鎖を形成する。この一次元鎖同士が芳香環スタッキングにより自己集積し、アントラセンカラムが形成される。今回新たに、ポルフィリンのような大環状化合物を有する直交型化合物(ポルフィリン-モノレゾルシン誘導体)を合成し、その結晶構造を調べた。その結果、期待したような水素結合一次元鎖が形成され、ポルフィリンカラムが構築されていることが明らかとなった。 3.今後の展開 アントラセン環一つ当たり、水素結合部位を2分の1個有する直交型化合物の結晶構造を明らかにし、より高密度な芳香環カラムを構築するための知見を得る。また、アントラセン環やポルフィリン環以外の環状化合物(ピレン環、クラウンエーテル類など)の配列制御についても検討する。またこれら結晶の物性(導電性、光特性、分子吸着能など)についても明らかにしていく。
|