観測によると、生まれたばかりの星に付随する星周物質はディスク形状をしていることが分かってきた。典型的なディスクのサイズは数千AU程度である。ディスク内のガスの物理状態を詳しく調べることにより、このディスクは非常にゆっくりと回転しながら中心に向かって動的収縮をしていることも明らかになってきた。このようなディスク状星周エンベロープは、その中心部で起こる連星系形成に大きな影響を及ぼすと期待される。本研究ではまず、動的降着を続けるディスク状星周エンベロープの形成および進化過程を数値シミュレーションによって調べた。 従来の研究では、数値計算の技術的困難から、分子雲コア内で原始星が形成される以前の進化(星なしコア段階)が重点的に調べられてきた。本研究では、原始星形成後の進化を調べるためにsink-cell法を開発した。この方法を用いることにより、ディスク状星周エンベロープの進化(原始星形成期)を非常に進化の進んだ段階まで追跡することに成功した(典型的な計算では、分子雲コアの全質量の9割が中心部に降着する段階まで追跡した)。 その結果、星形成領域に際だって多い、細長い分子雲コアが重力収縮すると、空間的に広がった動的降着するディスク状星周エンベロープ(半径数千AU)が自然に形成されることが明らかとなった。さらにガス円盤は動径方向に収縮を続け、中心部に連星の母体となる回転平衡円盤を形成することが分かった。この結果は、査読付雑誌に投稿中である。
|