我々は、星間ガスを支配する基礎方程式を高分解能かつ高精度のスキームを用いて数値的に解くことで、銀河スケールのガスダイナミクスをpcスケールの高空間分解能で追うことができる、新しい数値流体シミュレーション手法を開発した。これにより、局所不安定だが大局的には安定な、乱流的、多相星間ガスの数値モデルを構築し、星形成とそのエネルギーフィードバックの影響を、現象論的なモデルを導入せずに、表すことに成功した。我々のモデルでは、非一様かつ動的な星間ガス中の超新星残がいの進化を追うことができる。これを用いて、大マゼラン雲の大局的及び局所的星間ガス構造と、星形成についてシミュレーションを行い、数値計算結果を、最新のHI及びCOの高精度観測データ(ATCA及びなんてんサーベイ)と比較した。その結果、観測されるHIガス、分子ガスの特徴的な空間構造、及び分子ガス雲の統計的な構造をよく再現できることがわかった。さらに、超新星によるエネルギーフィードバックは、100万度以上の高温ガス領域を一時的に形成するが、星間ガスのclump/filament構造を壊すことはできないこと、むしろ、超新星からの衝突波によって、周囲の分子ガス雲が圧縮され、星形成が誘発されること、さらにその結果として、大質量性の寿命程度の周期の間欠的な星形成のバーストが引き起こされること、が明らかになった。 また、同様の数値流体モデルを、セイファート銀河NGC4303中心付近の多相星間ガスに対して適用し、中心付近の恒星系の棒状構造が作る非軸対称ポテンシャルの影響を調べた。その結果、ハッブル宇宙望遠鏡の観測される星形成領域、および星間塵による吸収構造がよく再現できることがわかった。さらに、銀河中心領域10pc以内へのガス降着率が年間約1/100太陽質量になることを示した。
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