研究概要 |
我々は従来の研究において、水素化物を不安定化させるためMg_2Niに第三元素を添加した。その結果、Mnを添加した合金では、低温におけるプロチウム吸蔵特性に改善が認められた。そこで、本研究では、Mg-Ni-Mn三元合金の更なる特性改善を図るため、Mn量を変化させた試料を溶製し、それらのプロチウム吸蔵・脱蔵特性を調べ、組織的観点からそれらの比較・検討を行った。また、水素化物のさらなる不安定化を目的として、四元合金を作製し、組織解析も行った。 Mn添加量の増加に伴い多くの化合物が晶出するようになり、Mg_2Niが減少する。250℃におけるPCT曲線は、Mn添加量の増加に伴い、最大水素吸蔵量が減少する傾向が認められるものの、プラトー圧には大きな変化は認められない。しかしながら、Mg_2Ni_<0.5>Mn_<0.5>合金MG材は、プラトー領域が3段階に分かれ、その吸蔵量は、二元合金とほぼ同程度である。活性化処理した試料を初期水素圧0.89-0.91MPaの条件にて、室温から300℃まで昇温した場合、Mn添加により低温側におけるプロチウム吸蔵量が増える。 活性化後、250℃でプロチウムを最大まで吸蔵させた各合金をAr雰囲気,室温にて長時間放置することで、プロチウムの放出量は増え、放出開始温度が低温側に移行する。これは、室温においてMg_2NiH_4相が、高温相から低温相へ構造変態することに起因するものと考えられる。また、Mn添加量の多い合金に生成されたMgH_2相は、低温からプロチウムを放出するようになる。 FeおよびMnを添加した四元合金の組織は、Mg固溶体,Fe-Ni-Mn化合物およびMg_2Ni相が観察される。急冷凝固することによって、Mg_2Ni以外の化合物量は大幅に減少し、Mg_2Ni相中へのMnおよびFeの固溶量は増加する。
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