1.C-D系プロチウム吸蔵材料 本研究ではグラファイトのミリングの初期からプロチウムの吸収が始まることや、その時グラファイトの層間が広がっていくことからプロチウムは層間に入っていくことが明らかにした。すなわち、ミリングによってグラファイトがナノ化した状態で、プロチウム吸収による層間距離の広がりを示す構造因子S(Q)の第1ピークの位置の変化が中性子回折実験により観察された。さらに、動径分布関数RDF(r)からC-D相関の位置が明確となった。グラファイトのプロチウム雰囲気でのミリングによって非架橋炭素原子が形成され、一部のプロチウム原子はこの炭素原子と結合するが、残りのプロチウム原子はグラファイト層間に入っていくことを示しており、ナノグラファイト材料はプロチウム吸蔵材料として期待できる。 2.V-D系プロチウム吸蔵材料 V-D試料としてMA法により非平衡α-VD_<0.67>(bcc)ならびにβ-VD_<0.43>(bct)を作製した。中性子回折で観察されるS(Q)ならびにRDF(r)はD-D、D-V相関のみでV-V相関がほとんど観察されない。しかもV原子の干渉性核散乱振幅は非常に小さいが負の値を持つことから、D-V相関は負の相関として観察される。このことを利用してD原子が位置している多面体を調べた。α-VD_<0.67>(bcc)におけるD原子から見た周りのV原子の配位数は3.99個となりD原子はV原子4個で構成される多面体すなわち4面体の中に位置していることが明らかとなった。ところがβ-VD_<0.43>(bct)相ではその配位数は5.45個となり6配位と4配位の中間の値であることから、プロチウム原子はナノ粒子の内部ではV原子で構成される8面体の中に、その表面ではそのV原子分布の乱れから4面体内に存在することが明らかとなった。
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