研究概要 |
錯体の非線形光学挙動の実験的観測は、測定法・試料成形などの問題から容易ではなかった。本研究では、多くの錯体について非線形光学定数を評価すべく,二つのアプローチによる研究を進めた。一つは、独自に開発した手法を駆使し、as grownな錯体の粉末結晶を用いても、従前からの確立した手法と遜色のない精度で非線形光学定数を評価する研究、もう一つは確立した非線形光学評価手法をそのまま適用出来る試料を得るという観点から、良質なLangmuir-Blodgett(LB)膜を作製し、得られたLB膜の光学的非線形性を調査する研究である。 1.LB膜を用いた研究成果 (1)粘土―金属錯体ハイブリッドLB膜 粘土単一層と金属錯体のLB膜を集積化する事により、安定かつ堅牢な金属錯体LB膜の作製を試みた。この膜は、少なくとも一ヶ月は再配列を起こさず、SHG挙動の研究に極めて好適であることを確認した。 (2)電荷移動錯体LB膜 表面圧などの注意深い観察に加え、疎水性部位と親水性部位の体積のバランス、ドナー(D)あるいはアクセプター(A)部分への疎水基の導入箇所などに関する緻密な分子設計やD・A体以外の部分の幾何学的な分子形状の制御を行うことで、所望のD・A対を含む安定な電荷移動鎖体LB膜の作製が可能となってきた。水平付着法で作製した(OMTTF)(C_<10>TCNQ)単分子膜などによるSHG干渉フリンジ測定にも成功している。これらのLB膜も熱的構造緩和に対して安定である事を確認した。 2.全反射(SHEW)法による粉末試料の測定 独自に開発した手法を用い、種々の錯体粉末試料の非線形光学定数を定めた。例えば、(テトラ-n-ブチルアンモニウム)(EtO-C[C(CN)_2]_2)の有効非線形光学定数d_<eff>などを、尿素の二次非線形光学定数との比較から求めた。
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