研究概要 |
本研究では,TTFやその融合型二量体(TTP)などの強いドナー分子とジチオレン錯体が融合した金属錯体について,(i)置換基および配位子の選択による分子配列制御,(ii)金属の選択による電子構造制御,を総合的に図る。得られた金属錯体を用いた分子性導体を構築し,その構造-物性相関を解明することにより,新しいタイプの分子性金属,最終的には超伝導体を創出することを目的としている。本研究により得られた成果は以下のとおりである。 (1)中心金属に金を用いたビス(TTFジチオレン)錯体(Au(dt)_2)の各種誘導体を様々な酸化剤を用いて中性あるいは陽イオンラジラル錯体を作製した。それらの加圧成型試料における伝導度の温度依存性はいずれも半導体的であったが,多くのものが高い伝導性を示し,かつ非常に小さな活性化エネルギーをもつ(σ_<rt>=10^0-10^1Scm^<-1>,Ea=0.02-0.05eV)ことから,単結晶状態では金属的な伝導性が期待されることが明らかとなった。伝導性物質自身の結晶構造は未だ明らかとなっていないものの,テトラキス(メチルチオ)およびビス(エチレンジオキシ)誘導体のアニオン種のX線構造解析に成功し,分子間に強いside-by-side硫黄-硫黄相互作用が存在することが明らかとなった。 (2)TTFジチオレートよりも金属状態を安定化できる配位子として,TTPジチオレートの前駆体であるビス(p-アセトキシベンジル)-TTP誘導体の合成に成功した。 上記(1)の結果をまとめた論文についてはMol.Cryst.Liq.Cryst.誌に掲載予定である。
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