研究概要 |
本研究では、配位様式の制御に基づく遷移金属錯体の次元設計により、レドックス活性なπ-共役系配位子からなる新規レドックス活性集積型錯体を構築することを目的としている。本年度は、レドックス活性π-共役系二座配位子であるN,N'-ビス(4'-アミノフェニル)-1,4-ベンゾキノンジイミン(1)からなるπ-共役系パラジウム二核錯体2のレドックス特性を明らかにするとともに、キノンジイミン部位の配位様式の制御に基づくπ-共役系環状多核錯体の合成およびその構造について検討した。 紫外-可視-近赤外スペクトルにおいて、π-共役系錯体2ではd-π^*に基づくMLCTバンドが800nm付近に見られたが、一電子還元体ではMLCTバンドが800nmから1200nmにかけてブロードな吸収として観測された。また、ESRスペクトルにおいて、g値が2.0041の超微細構造に基づくスペクトルが見られ、不対電子はキノンジイミン部位に局在化していると考えられる。 キノンジイミン部位の配位様式制御の試みとして、シス型錯体であるエチレンジアミンパラジウム錯体を用い、キノンジイミン誘導体1との錯形成について検討を行ったところ、3:3環状錯体3が得られた。X線結晶構造解析より、キノンジイミンの窒素がシン型でパラジウムに配位した3:3環状錯体であることが判明した。三つのキノンジイミン部位からなるカップ形のキャビティーが形成されており、溶媒のメタノール分子がカップの上と下に位置していた。興味深いことに、末端のジメチルアミノフェニル部位がface to faceでπ-π相互作用しており、3:3環状錯体生成の要因の一つではないかと考えられる。 以上の如く、次元設計に基づくレドックス活性π-共役系集積型錯体の開発、レドックス特性および構造の解明を行った。
|