研究概要 |
1.二核錯体[M(nta)(μ一bpypz)Fe(picen)]BF_4(M=Cr(III)(1);M=Co(III)(2):(nta=nitritotriacetate;bpypz=3,5-bis-(Pyridin-2yl)-Pyrazolate;picen=N,N'-bis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine)の合成に成功した。Cr-Fe錯体1・H_20・dmfのX線解析から、1はFe(II)回りが八面体から大きく歪み、Cr-O(CO)…HN(pcen)Fe間に分子内水素結合を有する高スピンFe(II)を含む異種金属二核構造であることがわかった。また。この磁化率測定から、250K付近でヒステリシスを伴う緩やかなスピンクロスオーバーを示す。1のスピン転移温度が[Fe(Hbpypz)(picen)](BF_4)_2の400K付近よりも低温側であるのは、配位環境の歪みによるためである。Co-Fe錯体2のメスバウワーとESRスペクトルから、高スピンと低スピンFe(II)のCo(III)-Fe(II)錯体の他に、Co(II)とFe(III)錯体が混在し、電子移動していると考えられる。 2.スピンクロスオーバー:[Fe(NCS)2(picen)]錯体の632.8nmレーザーでのラマンスペクトルのCN伸縮振動のピークは、室温では高スピン錯体のみであることを示す。磁化率測定でスピンクロスオーバーが起こる前の80-100Kで、ラマンスペクトルでは低スピン錯体の存在が観測されるが、磁化率からは低スピン・高スピン錯体の共存が見られる63K〜5Kでは、高スピン錯体のみになっている。同様の現象は典型的なスピンクロスオーバー錯体[Fe(NCS)2(phen)2]でも明瞭に観測できた。ラマン測定に伴うレーザー励起光照射でLIESSTが発現すると考えられる。
|