研究概要 |
本研究の目的は、通常のX-bandを用いた電子スピン共鳴(ESR)より高周波数の光源とパルス磁場を用いたサブミリ波ESRの特徴を生かして、様々な金属錯体の電子状態や磁気状態を明らかにする点にある。本年は以下の成果を上げた。 (1)(DI-DCNQI)_2Agに関して反強磁性共鳴の観測から5K以下の転移が反強磁性秩序によることを明らかにした。また、スピンラダー系Cu_2(1,4-diazacycloheptane)_2Cl_4の新たな磁気相転移をサブミリ波ESRで発見した。 (2)Pd(dmit)_2系はHOMOとLUMOからなる2-バンドモット系と考えられているが、対カチオンによりその物性が大きく変化する興味深い系である。X-bandESRでは、35K以下で信号が消失するMe_4As[Pd(dmit)_2]_2単結晶のサブミリ波ESRの測定を推進している。その周波数依存症から、この系が反強磁性状態にあることを明らかにしようとしている。 (3)Pd(dmit)_2系のHOMOとLUMOは圧力に敏感で、加圧によってその物性が大きく変化するものと予想される。そこで、圧力下のサブミリ波ESR測定をおこなうため、コンパクトな窓つき圧力セルを設計し、製作した。加圧テストで3kbarをえたが、材料を変えることによりより高い圧力をめざし、ESR測定を推進しようとしている。
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