空間構造をもつモデル磁性体の量子効果と相転移

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11136239
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 網代 芳民 九州大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00025438)
• 研究分担者: 浅野 貴行 九州大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00301333)
• キーワード: 低次元磁性 / 量子スピン / フラストレーション / 基底状態 / スピンギャップ / 相転移 / 金属錯体

研究概要

低次元系において顕著に現れる量子スピン効果や相互作用の競合によるフラストレーション効果を実験的に究明するためには、理想に近いモデル物質を創出する必要がある。本研究においては金属錯体分子集合体を用いて理想的な低次元スピン系を実現し、多様な実験手段を駆使して量子効果と相転移に関する理論的予言を検証し、逆に、従来の枠組みでは理解出来ない新規な異常現象を発見して、理論的研究にインパクトを与えることをめざす。予定した11年度計画にしたがってモデルとなる十分よく規定された多種多様な量子スピン一次元系のモデル物質を数多く合成し、あるいは合成化学者から試料の提供を受けて、磁化率、比熱、パルス磁場を用いた磁化測定、高周波磁気共鳴の実験を行なった。具体的には酸素、窒素、ハロゲン原子を介した超交換相互作用を有する金属イオンCu2+(S=1/2)あるいはNi2+(S=1)から成る磁気鎖に環状有機分子を配位させて鎖間を遊離させることによって、S=1/2 Heisenberg反強磁性鎖、S=1/2交替結合鎖,S=1/2梯子鎖、S=1Heisenberg反強磁性鎖、S=1/2とS=1から成る交互スピン反強磁性鎖等を合成し、系を特徴づける特異な磁場中挙動とくに量子スピン効果を反映したスピンギャップの存在と基底状態の性格を明らかにした。次年度にはこれらの成果を基にして微視的に量子スピン効果を実験的に究明し、相転移現象の新しい概念を構築するとことをめざして、磁気共鳴、中性子回折、uSR、強磁場磁化測定等による広範な実験的研究を行う。結果は既に学術論文や学会発表として部分的に公表を行った。

研究成果

• [文献書誌] J. B. Jamali et al.: "Alloying Effects on Intermolecular Magnetic・・・"Mol. Cryst. and Liq. Cryst.. 333. 121-130 (1999)
• [文献書誌] Y. Ajiro et al.: "High field ESR in one-dimensional quantum spin systems"Phyica B. (in press). (2000)
• [文献書誌] Y. Ajiro et al.: "High-Field, High-Frequency ESR in the 1D・・・"Suppl. J. Phys. Soc. Jpn.. (in press). (2000)
• [文献書誌] Y. Ajiro et al.: "μSR Study of 1:1 Complex of {Mn(hfac)_2} with・・・"Mol. Cryst. and Liq. Cryst.. (in press). (2000)
• [文献書誌] T. Asano et al.: "High-Field Magnetization Proccess in Free Radical・・・"Mol. Cryst. and Liq. Cryst.. (in press). (2000)
• [文献書誌] Y. Inagaki et al.: "High-Field Magnetization and High-Frequency ESR・・・"Mol. Cryst. and Liq. Cryst.. (in press). (2000)
• [文献書誌] M. Mekata et al.: "Ground state of the geometrically frustrated system・・・"Phys. Rev.. B61. 4088-4092 (2000)
• [文献書誌] T. Asano et al.: "ESR investigation on the Breather mode・・・"Phys. Rev. Lett.. (in press). (2000)
• [文献書誌] A. Keren et al.: "Magnetic dilution in the geometrically frustrated・・・"Phys. Rev. Lett.. (in press). (2000)