p51とp73はp53に特徴的な領域をすべて有し、転写誘導能、アポトーシス誘導能、増殖抑制能など機能的にもp53類似の活性を有する。これらの遺伝子について以下の解析結果を得た。(1)キメラ遺伝子を用いた解析-これらに特徴的な転写調節領域、DNA結合領域、複合体形成領域を連結した合成遺伝子(キメラ遺伝子)のプロモーターに対する指向性、活性の多様性を明らかにした。そこで、遺伝子治療、p53ファミリー遺伝子の機能解析に対する有効性を鑑み、多数のキメラ遺伝子のアテノウイルス組み換え体を作製した。(2)p51、p73のゲノム解析-両ゲノム配列のほぼ全長を決定した。イントロンの長さの保存性、alternative promoterの存在、alternative exonの存在、alternative terminationの存在、多数のexon skippingなど、両者はゲノム上も類似性が高いことが判明した。p51に関しては2つの独立したプロモーター領域を同定した。特にΔNプロモーターに関しては、10bP程度のエレメントに限定されたので、その転写因子のクローニングを行っている。(3)ΔNおよび新規アイソフォームの解析-両遺伝子の新規アイソフォームを同定した。中でも、上記解析からΔNp73を同定した。ΔNp73は相互作用を通してTAp73を、DNA結合配列に対する競合阻害からp53をドミナントネガティブに阻害することを見いだした。(4)p51、p73蛋白質の制御機構解析-p53の制御は、発がんに密接に関係している。その主たる制御蛋白質MDM2とp51の関係を検討し、p51はMDM2に制御されないことを明らかにした。しかし、p51の顕著なユビキチン化を検出したので、現在p51を制御していると考えられるMDM2様遺伝子のクローニングを進めている。
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