我々はブルーム症候群の原因遺伝子産物(BLM)の機能を分子レベルで解析し、その機能の欠損がどのようなメカニズムでブルーム症候群の細胞の異常に結び付き、さらに患者の病態にかかわっているのかを明らかにすることを目的に研究を進めた。解析にあたっては、高等真核細胞だけでなく、ブルーム症候群の相同遺伝子(SGS1)が存在する酵母を用い、分子遺伝学的手法を駆使してブルーム症候群の相同遺伝子の機能を解析し、得られた成果を高等真核細胞の解析にフィードバックしていくという方法論をとり、以下の結果を得た。 1.酵母のSGS1にBSの患者で見いだされた変異と同じ変異を入れると、SGS1変異株がMMS感受性になり、SCEが増加することから、酵母のSGS1遺伝子破壊株が分子レベルでブルーム症候群モデルになることを明らかにした。また、Sgs1の機能にはヘリケース活性を必要とする機能と必要としない機能があることを示し、遺伝学的解析から、SGS1はMEC1の下流、RAD51の上流で機能していることを明らかにした。 2.BLMが既知の核内構造体とは異なる特殊な構造体に存在し、その構造体に局在するためにはBLMのN末の238-586のアミノ酸配列が必要であることを明らかにし、また、BLMがSUMO-1化されている可能性を示唆した。 3.トリのDT40細胞を用いてBLM遺伝子及びRAD54遺伝子破壊株を作製して解析することにより、ブルーム症候群で亢進しているSCEの大部分は相同組換えにより生じることを明らかにし、BLMはDNA複製時に生じる二本鎖DNAの切断を抑えていることを示唆した。また、BLMの機能が欠損するとtargeted integrationの頻度が上がることを明らかにした。
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