ラットチトクロームP4501A2遺伝子のメチルコランスレンによる誘導に必須のエンハンサーを解析し、以下の諸点を明らかにした。 1.P4501A2エンハンサーは従来より知られている、外来異物による誘導に反応するエンハンサー、XREとは塩基配列が明らかに異なり、CACGCというXREのコア配列を持たない。そのかわり4bpからなる繰り返し構造が6bp離れて存在した。 2.大腸菌で発現したAhリセプターとArntをつかってP4501A2エンハンサーへのAhリセプター/Arntヘテロダイマーの結合を調べたが、結合しなかった。また酵母の発現系でもAhリセプターとArntはP4501A2エンハンサーに結合しなかった。これに反し、XREはこれらの系でAhリセプター/Arntヘテロダイマーと結合した。 3.P4501A2エンハンサーに特異的に結合する因子を探索したところ、ヒト肝がん由来のHep3B細胞で見出すことができた。また発現量の多少はあるが、全ての調べた組織で発現していた。この因子は上記の繰り返し構造を認識した。 4.P4501A2エンハンサー結合因子はAhリセプター/Arntヘテロダイマーと直接結合することが判明した。またこの結合はArntによって行われていることが推定された。この結果はAhリセプターとArntがコアクチベーターとして作用することを意味する。 5.コンピューターによるデータベース検索の結果、このエンハンサーはラットP4501A1遺伝子のプロモーターに存在することがわかり、その活性を調べたところ、P4501A2遺伝子のエンハンサーの約60%の活性を示した。
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