申請者はこれまでにインプリンティングの関与する癌の研究を11p15領域に関しておこなってきた。この領域ではBeckwith-Wiedemann症候群がマップされ、さらにWilms腫瘍における母親由来のアリールの選択的欠失など母親由来のアリールのみ発現する癌抑制遺伝子の存在が示唆されていた。そこでこの領域から母親由来のアリールのみ発現する遺伝子を検索することによりp57KIP2遺伝子をみいだし、これがBeckwith-Wiedemann症候群の原因であることを発見した。最近1p36領域など癌におけるインプリンティングの関与する領域が続々と報告されてきている。またインプリンティングを受ける遺伝子がゲノム中ではごくまれなものであることを考えると、インプリンティングを受ける遺伝子を組織的に単離し、その中から癌抑制遺伝子、癌遺伝子を探索することが効果的だという着想にいたり、本研究を進めている。 インプリンティングを受ける遺伝子はAndrogenesis胚あるいはParthenogenesis胚を用いれば、正常の遺伝子と発現の差のある遺伝子として単離できる。そこでmicroarrayという技術を適応するには格好の材料である。現在までのところすでにParthenogenesis胚を十分な量、作成することに成功し、抽出したmRNAを用いてmicroarray上の約1万個のESTをスクリーニングした。そうしたところ正常胚とParthenogenesis胚とで発現の差のあるものをみいだし、現在解析中である。
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