本研究では、EBウイルス感染によって惹起される腫瘍が民族・人類集団によって異なる点に注目し、東南アジアに多発する上咽頭癌と新たに記載されたEBウイルス陽性Tリンパ腫を例として、ウイルスの亜型と発症者の人類学的背景を検索し、最終的には予防・診断へと結びつけることを目的とする。 平成11年度は、東南アジア型EBV陽性Tリンパ腫の発症要因を主として検索した。患者試料を材料として分離されたDNAを用い、ウイルスの亜型、HLA、リンフォカイン、T細胞受容体の検索をおこなった。また、患者血清を用い、抗ウイルス抗体、腫瘍壊死因子の検索をおこなった。患者90例(タイ南部ソンクラ王子大学より)についての検索結果から、(1)患者はウイルス抗原に対し低い抗体価を示す、(2)患者血清腫瘍壊死因子は高濃度である、(3)T細胞受容体遺伝子再配列パタンから腫瘍細胞のクロナリティが確認された、(4)ウイルスの腫瘍遺伝子LMP-1に多様性が見いだされた。一方、EBウイルス関連疾患の1つである上咽頭癌患者病理標本40検体(タイ国立ガン研究所より)を対照として、DNAを抽出しウイルスゲノム型の検索をおこなった。
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