研究概要 |
1.スキルス胃癌細胞株2Mとその高播種転移性株2MD3について、RDA(Representative Difference Analysis)法により検出された1pのホモ欠失領域より全長およそ7kbの新規コラーゲン遺伝子ZAP1が得られた。29の癌細胞株中7つの細胞株においてフレームシフトを伴う変異転写産物が認められた。なお、ゲノムDNAをエクソン/イントロン境界部近傍も含めて解析した範囲では異常は認められていない。同様な現象は染色体脆弱部位FRA3Bより単離されたFHIT遺伝子においても報告されており、1p21-22領域においても染色体欠失が認められることから、遺伝子転写機構のfidelityの低下が惹起されている可能性が示唆される。 2.トランスクリプトーム解析においては、合成オリゴヌクレオチドアレイであるGeneChip(Affymetrix)を用いて約40,000個のヒト遺伝子あるいはEST(Expressed Sequence Tag)を対象として、上記の胃癌細胞株2Mと2MD3において発現が変動した遺伝子群を同定した。今後、これらの遺伝子の腹膜播種との関与を検討すべく、2M細胞への発現誘導あるいは発現抑制を行うことにより機能解明を進める予定である。また、ヒト胃癌腹膜播種組織におけるこれらの遺伝子の発現についても検討を加える。 3.酸化グアニン修復酵素であるhOGG1/MMH遺伝子の詳細なゲノム構造を決定し、発がんとの関与について関連解析を行った結果、第1エクソンのDNA多型と肺腺癌に有意な関連が認められた。さらに大きな集団あるいは異なった地域、人種においての検討を進める必要がある。
|