研究概要 |
1.ヒトゲノムからp53結合配列のスクリーニングを試み,p53標的遺伝子の単離とその機能解析を行った. (1)その中で7回膜貫通蛋白をコードするBA11遺伝子をグリオブラストーマ細胞に導入しin vivoで観察をした結果,BA11を導入した癌細胞株では血管新生が著明に制御されたことを確認した.さらに酵母two-hybrid系を用いて,BA11遺伝子産物と相互作用する蛋白をコードする3つの新規遺伝子を同定した. (2)GMLの発現と種々の悪性腫瘍由来細胞株においてDNA障害性薬剤を中心とした抗癌剤に対する感受性に相関が認められた.GMLの機能解析を行うため,GML発現が癌細胞へ与える影響を検討した.3種類のヒト癌細胞にGML遺伝子を高レベルに発現させた場合,細胞増殖には影響を与えないが,抗癌剤あるいは放射線に対する感受性の増加が認められた.グリオブラストーマ細胞T98GにGMLを強発現させると,アポトーシスによる細胞死を誘導することが確認された. 2.P53ファミリー遺伝子p73,p51とp53の転写活性化能,細胞増殖制御能,アポトーシス誘導能について比較し,以下の点を明らかにした. (1)p53に比べると弱いが,p73βおよびp51Aは内在性p21蛋白誘導能を示した.この結果はp53応答性配列を介した転写活性能の結果と一致した. (2)p73,p51を発現する組み換えアデノウイルスを作製した.DNA断片化を指標にアポトーシス誘導能を検討した結果,複数のヒト癌細胞株において,Ad-p73βおよびAd-p51AはAd-p53に比べて強いアポトーシス誘導能を示した. (3)細胞増殖制御能とp21発現誘導能の結果から,細胞死を誘導するためのp73およびp51の標的遺伝子はp53標的遺伝子とは異なる可能性が示唆された.
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