研究概要 |
1.研究目的 本研究では、GST-p knockout mouseを用いてGST-πの大腸癌発癌における意義を明らかにするとともに、GST-π活性を特異的に阻害するγ-Glutamyl-S-(benzyl)cysteinyl phenylglycineを合成し、その癌予防薬としての有効性を検討した。 2.方法と結果 (1)GST-p knockout mouseとcontrol mouseに大腸発癌物質azoxymethaneを投与し、12週後に屠殺して全大腸を観察したところ、それぞれ0.2±0.1個/匹、2.3±0.4個/匹のACFが認められた。(2)拡大内視鏡下にACFと正常組織を生検し、二次胆汁酸(deoxycholic acid)を含む培養液にて4時間処理した後、TUNEL法にてアポトーシスの有無を検討したところ、それぞれ66.7%と14.6%にapoptotic bodyを認め、ACFは胆汁酸誘導アポトーシスに抵抗性を示すことが示された。一方、ACF組織をGST-π阻害剤にて予め処理すると、58.3%に増大した。(3)ラットにazoxymethaneを投与した後、GST-π阻害剤を連日投与し、3ヶ月後に屠殺して全大腸のACF数を計測したところ、平均.7±2.5個のACFを認め、対象群(14.3±3.1)に比べて有意に減少することが示された。 3.考察 GST-p knockout mouseを用いた実験により、GST-πが大腸癌発癌過程の初期病変であるACFに発現し、発癌に重要な役割を果たしていることが示された。また、ACF組織を用いた実験により、GST-π阻害剤は二次胆汁酸誘導アポトーシスを増強することが示された。さらに,ラットを用いたin vivoの実験により、この阻害剤がACFの形成を有意に抑制することが示され、癌予防薬としての有効性が示された。
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