Evi9は、新規のマウス骨髄性白血病原因遺伝子としてBXH-2マウス白血病のレトロウィルス挿入部位から同定された。本年度の研究では前年度に引き続きEvi9がコードする蛋白の機能解析を進め、またヒトEVI9遺伝子を単離して、以下の点を明らかにした。 (1)Evi9遺伝子は、Znフィンガー蛋白質をコードし、alternative splicingにより3種類のisoformがコードされる。このうち、Znフィンガードメインと酸性ドメインを有するisoformは核内に、他は細胞質に存在することがわかっていた。さらに、Evi9がBCL6とco-localizeすることもわかっていたが、本年度は両者の結合ドメインをGST融合蛋白質を作製して調べ、両者はEvi9のZnフィンガーとBCL6のPOZドメインを介して結合することがわかった。 (2)HL60細胞をレチノイン酸で顆粒球へと分化させるとEvi9の発現がdownregulateされた。Evi9をHL60細胞に導入すると、顆粒球への分化を抑制することがわかった。また、この際Evi9はアポトーシスを抑制することも明らかになった。一方、HL60細胞やU937細胞をTPAで刺激して単球へと分化させるとEvi9の発現は一過性に低下した後、再び亢進することが認められた。現在この意義について検討している。 (3)Evi9蛋白は転写制御因子として機能している可能性が示唆されたので、GAL4蛋白と融合蛋白を作製して転写調節能を検討した。すると、Evi9は転写抑制能を持ち、Znフィンガードメインに転写抑制領域が存在していた。 (4)昨年度単離したヒトEVI9が、第2染色体p13に存在することをFISH法により明らかにした。この領域は、ヒト悪性リンパ腫で異常を示すものが知られているので現在検索中である。
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