ヒト乳癌で、CpGアイランドのメチル化の異常がどの様な遺伝子にどのくらい存在するのかを検討するため、2例の乳癌をmethylation-sensitive representational difference analysis(MS-RDA)法により解析した。乳癌で過剰にメチル化されるDNA断片を合計25個、過少にメチル化されるDNA断片を22個、分離した。これらのDNA断片のメチル化の異常を、合計14例の乳癌で検討した。その結果、5例の乳癌では過剰及び過少なメチル化の両方に多くの異常が、2例の乳癌では過少なメチル化に多くの異常が、7例の乳癌では、比較的少数のメチル化の異常のみが、認められた。乳癌の一部では、メチル化の異常が高率に存在し、その維持機構に破綻が起きていることを示唆する結果である。これらの14症例で、BRCA1遺伝子の全タンパク質翻訳領域について生殖細胞突然変異を検索し、メチル化異常の多寡との相関を検討したが、相関は認められなかった。一方、多くの乳癌症例で共通に過剰なメチル化を受け、発現が低下する遺伝子として、乳腺上皮に増殖抑制的に働くGタンパク質及び細胞内セカンドメッセンジャーを同定した。
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