自然転移能の高いマウス骨肉腫細胞株に補助シグナル分子の遺伝子を導入することにより、抗腫瘍免疫反応の増強を試みた。補助シグナル分子としては、B7-1、B7-1a、B7-2を用いた。B7-1とB7-2は、腫瘍に遺伝子導入することにより、宿主の抗腫瘍免疫反応を高めることは報告されている。しかし、B7-1、B7-2分子は活性化T細胞上に発現するCTLA4分子とも結合し、T細胞に抑制性シグナル伝達する。B7-1aはB7-1の選択的スプライシング産物であり、抑制性シグナルを伝達するCTLA4に対して、B7-1、B7-2より親和性が著明に低下している。LM8を同系マウス皮下に接腫すると、6週目で多くの肺転移を形成する。B7遺伝子導入株においては、いずれも腫瘍増殖および6週目での肺移転数は著明に減少した。B7分子群の中で、B7-1aはB7-1、B7-2に比し有意に肺転移数、増殖を抑制した。しかし最終的に生存率および生存曲線を比較したところ、B7-1とB7-1a群で有意差は認められなかった。これはB-1aはB7-1に比較してCTLA4に対する親和性が低いものの、結合力が存在するため結果的にCTLA4を介した抑制性シグナルをT細胞に導入するためと考えられた。そこで遺伝子導入と抗CTLA4抗体の併用療法を試みた。抗CTLA4抗体投与はLM8に対しては全く効果を示さなかったが、B7-1遺伝子導入株接腫後、0、3、6日の3回、1匹あたり100μg投与することにより、遺伝子導入単独療法に比して著明な抗腫瘍効果を示し、腫瘍増大の抑制、肺転移数の減少をきたした。最終的な生存率、生存期間の延長をもたらすか否か、さらにはB7-1a遺伝子導入と抗CTLA4抗体の併用療法について引き続き検討中である。
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